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自治体の電話取次ぎ業務を自動化する方法と導入8ステップ|振り分けルールの作り方

COLUMN

自治体の電話取次ぎ業務を自動化する方法と導入8ステップ|振り分けルールの作り方

代表電話が鳴るたびに、用件を聞いて担当課へつなぐ。1日に何百件と繰り返されるこの作業を自動化できないか、という検討が各地で始まっています。

ただ、実際に進めようとすると手が止まります。どこまで機械に任せてよいのか。担当課が分からない電話はどうするのか。予算はいつ要求し、どの順番で進めるのか。事業者のサービス紹介ページには、この答えが書かれていません。

手がかりは、他の自治体が公開している仕様書・市長会見・実証報告書のほうにあります。本記事では、それらの一次資料をもとに、取次ぎのうち自動化できる部分と人に残す部分の線引き、4つの方式の違い、年度サイクルに合わせた導入8ステップ、そして振り分けルールの作り方までを整理します。

目次

1. 結論:自治体の電話取次ぎは「振り分け」から自動化し、担当課不明・緊急・苦情は人に残す

先に結論を3点で書きます。

  • 取次ぎは「用件を聞いて担当課へつなぐ(振り分け)」と「その場で答えて終わる(回答)」に分かれます。自動化は振り分けから始めると効果が出やすくなります
  • 担当課が分からない用件、緊急の電話、苦情や広聴、デジタルに不慣れな方からの電話は、人が受ける前提で設計します。
  • 既存の代表番号を変えず、その前段に自動応答を置いて、対応できない電話だけ人が取り次ぐ構成が現実的です。

数値を1つだけ挙げます。京都市は区役所の代表電話に自動音声応答を試験導入し、「受け付けた電話のうち約7割がSMSの送信又は目的の窓口への自動転送で対応を完結」したと公表しています(京都市 KYOTO CITY OPEN LABO)。内訳は3-1で扱います。

区分具体例理由受け方
自動化しやすい取次ぎ住民票・税・ごみなど、担当課が明確な定型用件/直通番号や担当課名をすでに知っている再訪者用件と担当課が1対1で対応するため、機械的に振り分けられる自動音声応答(IVR・AI振り分け)
人に残す取次ぎ担当課が分からない用件・複数課にまたがる用件/緊急・生命身体に関わる電話/苦情・広聴/デジタルに不慣れな方からの電話用件の仕分けそのものに判断が要る、または聞き取りを途中で打ち切れない交換手・職員・コールセンターの有人対応

本記事は「取次ぎ業務」に絞ります。電話対応DXの全体像と4つの方法は自治体の電話対応DXとは?、AI電話の仕組みは自治体のAI電話対応とは?、自動応答の種類全体は自治体の電話自動応答とは?、コールセンター委託の費用は自治体のコールセンター委託とAI活用の費用・特徴を比較でそれぞれ解説しています。なお「電話対応DX」記事の導入5ステップは概要版で、本記事6章はそれを取次ぎ向けに分解した実務版という位置づけです。

2. 自治体の電話取次ぎ業務とは|誰が・どのように取り次いでいるか

自治体の電話取次ぎ業務の受け方

自治体の電話取次ぎ業務とは、代表電話にかかってきた住民等の電話の用件を聞き取り、担当課の内線や直通番号へ転送する一次対応のことです。

職員の負担全般(業務の中断や若手への集中など)は電話対応に共通する論点のため、本章では取次ぎ固有の構造だけを扱います。

2-1. 取次ぎの受け方は3通り(交換手/職員の一次受け/コールセンター)

誰が最初に受けるかで、3つの型に分かれます。

  • 電話交換手が受けて内線転送する型——委託または会計年度任用職員が担います。八潮市の電話交換業務仕様書は「常駐員数は電話交換機器2台に対し、常時2人以上」と定め、外線着信数を「約700件(令和3年度1日平均)」としています(局線35回線・内線約450回線)。
  • 総務課などの職員が一次受けする型——赤磐市の仕様書は現状を「主として会計年度任用職員1名(平日の8時30分から17時までの勤務)が対応しており、当該職員が不在の場合や、同時に複数の受電がある場合など1名で対応しきれないものについては、部内の職員が対応している」と明記しています。
  • コールセンターが一次受けする型——奈良市コールセンターは「年間約14万件の電話問い合わせを受信。そのうち約3割は回答できているものの、約7割は職員へ転送し対応」していると市長会見で説明されています(令和6年度)。大阪府は平成24年4月に代表交換電話をお問合せセンターへ集約し、転送先の担当グループは465あります(令和8年4月1日現在・仕様書)。

なお閉庁時間の受け方(警備室・宿日直・電子音声)は7-3で扱います。

2-2. 数字で見る取次ぎ業務の規模と費用

公開資料から件数と費用の例を並べます。

自治体対象電話件数(期間)体制契約金額(期間)出典
大阪府府庁代表電話着信総数 令和4年度356,339件→令和6年度282,529件。1件当たり平均処理時間76秒(後処理約10〜20秒は別)オペレーターが全件転送(金額は自治体のコールセンター委託の記事3章を参照)仕様書
大阪市区役所代表電話令和5年度 入電676,824件・応答率87.86%(令和3年度は811,690件・71.35%)コールセンター等広聴年報
八潮市市代表電話1日約700件(令和3年度平均)常時2人以上仕様書
岡山市本庁舎代表電話交換業務委託落札額 税抜38,812,840円・税込42,694,124円(令和8年7月〜令和11年6月の3年間・一般競争入札2社)入札結果

※件数は「代表電話の着信」「区役所代表電話の入電」など母数が異なるため、横並びで比較しないでください。また大阪市の応答率の改善は体制変更を含む結果であり、自動化による効果ではありません。

規模感の目安として、大阪府の1件当たり平均処理時間76秒に令和6年度の着信約28万件を掛けると、およそ5,900時間になります(後処理時間を含めない編集部試算)。

2-3. 取次ぎ固有の2つの困りごと(担当課不明・二度言わせる)

取次ぎには、他の電話対応にはない困りごとが2つあります。

1つは、担当課が分からない電話です。赤磐市の仕様書は手順を「担当課が不明の場合は、市民等の連絡先等必要な情報を聴取、記録した上で、一旦電話を切り、担当課を確認する。担当課が判明すれば、内容を引き継いで折り返し担当課から回答するよう依頼すること」と定めています。明文化されているということは、不明のケースが常態だということです。

もう1つは、転送によって住民に同じ話を二度させてしまうことです。奈良市では約7割が職員へ転送されます。大阪府の仕様書は、代表電話で所属に引き継ぎを行った際に「引き継いだ『所属』及び『用件』を記録できること」をシステム要件に挙げています。引き継ぎ情報の欠落が課題として認識されている、ということです。

3. 取次ぎ業務のうち「自動化できる部分」と「人に残す部分」

自動化できる取次ぎと人に残す取次ぎ

ここが本記事の核心です。取次ぎに限定して、公開資料の記述から線引きします。用件の一般的な仕分け(AIに向く問い合わせ、人が対応すべき用件)は自治体のAI電話対応とは?の記事で扱っているため、ここでは取次ぎだけを見ます。

3-1. 振り分け(担当課へつなぐ)と回答(その場で終わる)は別物

振り分けは、用件を聞いて担当課へつなぐところまでです。回答は、担当課につながずに案内やSMSで完結させることです。多くの製品は両方できますが、取次ぎ業務がどれだけ減ったかを測るときは、この2つを分けて数える必要があります

京都市の試験導入では、内訳が公表されています。

対象・期間京都市 3区役所の代表電話ほか、試験導入5か月間・28,267件の通期内訳(事業者の事例記事)
SMSやアナウンス等で用件が完了33%回答に相当
音声案内の操作で交換手を介さず担当課につながった31%振り分けに相当
従来どおり交換手に転送36%人に残った分

※市公式の途中集計(令和6年11月〜令和7年1月)では約36%/約33%/約31%で、集計期間が異なります。

「交換手の手を離れた電話は約64%」という言い方をする場合は、完了33%と自動転送31%を編集部で合算した値であり、市公式の発表は「約7割」であることを付記してください。本記事の1章・5章・9章では市公式の「約7割」を使っています。

他の事例も、何を測った数値なのかを区別しておきます。長野原町の「導入2〜3週間・636件中551件を自動転送・自動振り分け率87%」は振り分けの数値であり、回答の完結率ではありません。桑名市の「総務課の電話が1日約20件から5件程度へ」は、総務課に来る転送が減ったという意味です。いずれも事業者の事例記事における町・市職員の発言です。

3-2. 人に残す取次ぎ(4類型)

自動化しても人が受ける必要がある取次ぎは、4つに整理できます。

① 担当課が不明・複数課にまたがる用件

自動化しても「不明枠」は必須です。羽村市の代表電話の案内は「内線番号や担当課がご不明な場合は、999を押すか、そのままお待ちいただければ、『電話交換手』につながります」としています。長野原町でも「デジタルに不慣れな方がAIに戸惑い、結果的に総務課へつながるケースもごくまれに」あると報告されています。

② 緊急・生命身体に関わる電話

警視庁本部代表電話の自動音声案内は「緊急の事件・事故は110番通報してください」と明記しています。大阪府の仕様書は、広聴のうち「生命・身体にかかわるもの」「府民の安全確保等について緊急で対応する必要がある案件」を黄フラグとして別管理する仕様です。自治体の代表電話でも、虐待通報・災害・事故については自動音声の最初に別番号の案内を置きます。

③ 高齢者・障がい者・外国人

大阪府の仕様書は「人でしか対応できない高齢者・障がい者等デジタル技術への対応が困難な方の対応や、複雑かつ高度な電話内容についてのみオペレーターが対応する」とし、あわせて「デジタル弱者である障がい者や高齢者が取りこぼされることのないよう、そのフォローについては十分に行う」と求めています。長野原町でも「高齢化が進む町ではボタン操作自体が高齢者の負担になるという懸念」が語られています。

④ 苦情・広聴・行政処分に関わる申出

大阪府は広聴の受付を一次回答の対象外とし、オペレーターが「申出の趣旨を余すところなく最後まで聴取」する仕様としています。途中で機械的に打ち切れない種類の電話です。

したがって、自動化の対象は①〜④以外の定型用件になります。人に残す4類型の受け皿(有人の転送先、時間外の案内)を先に決めてから、自動化の範囲を決めてください。順序が逆になると、取りこぼしが出ます。

4. 取次ぎを自動化する4つの方式|振り分けの仕組みと既存番号との関係で比べる

取次ぎを自動化する4つの方式

ここでは「取次ぎ」に直接効く4方式に絞って比べます。自動応答の種類全体(オートコールや音声ガイダンスを含む分類)は自治体の電話自動応答とは?の記事で扱っています。

大規模な団体でも、方向性は同じです。大阪府の次期仕様書は「現在は電話転送はオペレーターが全て対応しているが、今後はオペレーターを介さずにデジタル技術を活用した取次ぎ業務を導入し、これでは対応できない電話について取次業務を行うこと」と求めています。自動で振り分けたうえで、対応できない電話だけ人が取り次ぐ構成です。

方式振り分けの仕組み担当課不明時の扱い既存の代表番号・交換機との関係公開事例組み合わせる相手
プッシュ式IVR住民が番号を選ぶ(部署選択型・内線直接入力型)専用の番号(0番・999番等)または無操作で有人へ代表番号の前段に設置できる羽村市、国土交通省、京都市(SMS併用)有人の交換台・SMS
音声認識・AIによる用件振り分け住民が用件を話し、キーワードや意図から担当課へ転送再質問のうえ、自社コールセンターまたは総務課等へ転送代表番号の前段に設置できる長野原町、桑名市、高松市(別番号での一次応答)有人転送先・辞書の運用体制
クラウドPBX・転送設定振り分けそのものは行わない(着信ルール・転送・録音を一元化)転送ルールの設計次第交換機をクラウド化する。既存番号は継続利用できる場合が多い奈良市、赤磐市(外線転送)IVRまたはAI振り分け(単独では不足)
有人一次受けの外部委託オペレーターが聞き取って転送オペレーターが確認して対応代表番号を委託先へ転送する大阪市(なにわコール)、京都市、岡山市IVRまたはAI振り分け(前段に置く)

4-1. プッシュ式IVR(部署選択型・内線直接入力型)

住民が番号を選ぶ方式です。用件をどの課が扱うかの判断を住民に委ねるため、担当課を知らない住民には向きません。

羽村市は3桁の内線番号を直接入力する方式で、不明な場合は999番で交換手につながります。国土交通省は平成26年6月30日から「取次業務の迅速化等による行政サービスの向上を図るため」代表電話を自動音声化しました。

部署選択型には限界もあります。桑名市は「従来のボタン操作式IVR(自動音声応答)を導入し、総務課を含む6つの課へ振り分ける仕組みを作りました。それにより一定数は減ったものの、それでも総務課への転送業務は依然として多く」と振り返っています(事業者の事例記事における市職員の発言)。

一方で、SMSと組み合わせると効果が出ます。京都市はIVRとSMSの併用で約7割を完結させました。前橋市国保課の例では、年間約4万件・多いときは1日200件以上の電話に対し、自動音声応答の試験導入から約3か月で職員の対応件数が約31%減り、約211時間分が削減されたと報じられています(自治体職員向けメディアの取材記事)。

4-2. 音声認識・AIによる用件振り分け

住民が用件を話し、そのキーワードや意図から担当課へ転送する方式です。担当課が分からない住民でも振り分けられる点が、部署選択型との決定的な違いになります。

長野原町では「約1,500件のキーワード候補を収集。そこから優先順位の高い400ワードに絞り込み」、自動振り分け率87%に達したとされています。桑名市は「登録したQ&Aの数は300件以上」で、総務課の電話が1日約20件から5件程度になったと報告されています。

限界もあります。固有名詞や町名の認識誤りです。高松市の市長会見では「一部の町名等の単語を正しく認識できなかった事例」があったことが説明されています。

4-3. クラウドPBX・転送設定による取次ぎの再設計

交換機をクラウド化し、着信ルール・転送・録音・文字起こしを一元化する方式です。

奈良市は「これまで庁内に設置していた専用の電話交換機(PBX)の機能を、クラウド上に設置し、インターネットを介して電話機能を利用できるサービス」を導入し、令和8年3月16日から新コールセンターを稼働させ、通話の文字起こしとAI要約を行うとしています。自動応答は秋以降の計画です(令和8年2月時点の市長会見プレスリリース)。

赤磐市は、代表電話(ひかり電話24回線)を外線転送で市役所外の交換業務実施場所に受ける形をとり、対応できない電話は「市役所へ自動で再転送する設備等を設け、市役所内で職員が対応できる体制を取ることも可」と仕様化しています。既存の代表番号を変えずに前段を作れる例です。

ただし、クラウドPBX単独では振り分けの精度は上がりません。4-1または4-2と組み合わせることが前提になります。

4-4. 有人一次受けの外部委託(交換業務委託・コールセンター)

人が受けるため、担当課が不明な電話にも緊急の電話にも対応できます。大阪市のなにわコールは「コールセンターでの1次応対完了率 89.40%」と報告されています(令和5年度広聴年報)。京都市は区役所・支所の代表電話交換業務を民間委託しています(プロポーザル選定結果)。

一方で、席数×時間帯の固定費は残ります。岡山市本庁舎の交換業務委託は3年で税込42,694,124円です。また、奈良市のように約7割が職員へ転送される構造そのものは、委託しても変わりません。

費用・委託範囲・偽装請負の論点は自治体のコールセンター委託とAI活用の費用・特徴を比較で扱っています。

5. 自治体の電話取次ぎ自動化の事例|取次ぎのうち何割が人の手を離れたか

取次ぎ自動化の公開事例

事例を「取次ぎのうち人の手を離れた割合」という軸で並べます。AIの完結率や正答率といった回答系の指標は、ここでは扱いません。

自治体対象電話方式期間人の手を離れた割合人に残った割合出典種別
京都市区役所の代表電話(試験導入は3区代表電話ほか9回線)IVR+SMS2024年11月〜2025年3月約7割が完結・自動転送(市公式)※1約3割が交換手へ市公式+事業者記事
長野原町(人口約5,000人)役場代表電話全体音声AI振り分け導入2〜3週間636件中551件を自動転送(87%)※2自動転送できなかった85件事業者記事(町職員の発言)
桑名市市役所代表電話のうち総務課への転送音声AI振り分け(2025年導入)総務課の電話が1日約20件→5件程度※3事業者記事(市職員の発言)・プレスリリース
高松市市民課の電話(別番号でのAI一次応答。代表電話全体ではない)生成AI一次応答+職員転送1か月595件のうち約65%は職員に転送されずAIのみで対応※4職員へ転送 約35%市長定例会見(令和8年3月3日)
大阪府府庁代表電話(年約28万件)次期仕様書でIVR・AI一次応答+オペレーター目標:5年間で入電2割減※5転送先465グループ・一次回答率92%以上を要求仕様書

※1 市公式の発表値。内訳は3-1を参照してください。
※2 「自動転送」の割合であり、回答の完結率ではありません。
※3 総務課に来る転送の減少であり、代表電話全体の数値ではありません。
※4 市長は「回答の精度に幅はございますが」と説明しており、解決率ではありません。
※5 目標値であり、実績ではありません。

「振り分け率」「完結率」「一次回答率」は定義が自治体ごとに違います。大阪府は転送・コールバックを一次回答に含めていません。優劣の比較には使わないでください。

事例の限界も併せて見ておきます。高松市の会見では「事実と異なる回答も見受けられた」「対応速度につきましては、約27%の方が『やや不満』」と説明されており、アンケートの回答は15件です。

また、三次市がごみ分別の専用ダイヤルで行った実証は取次ぎの事例ではないため上の表には入れていませんが、実証結果報告書の次の記述は重要です。「AI導入前の電話対応時間や転送後の職員対応時間がないため、この数値だけから職員負担の削減率を算定することはできません」。導入前に現状を測っていないと、効果が説明できなくなるということです。これが次章のStep1につながります。

6. 自治体が電話取次ぎの自動化を導入する8ステップ|年度サイクルに合わせた進め方

導入8ステップと年度サイクル

民間向けの導入ロードマップは30日や3か月といった時間軸で書かれていますが、自治体では予算要求・調達・議会を通す必要があります。ここでは総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>」(令和7年12月・第4版)第2章の5段階(1事前検討→2計画立案→3調達・事業者選定→4AIの導入→5運用、p.31)に沿って、電話取次ぎ向けに8ステップへ分解します。

先に時間軸の答えを書きます。実証から本格導入までは、半年から1年というのが実例です。

自治体現状分析実証予算・調達本稼働出典
高松市令和7年3〜8月に市民課の業務プロセス分析令和8年2月2日〜3月1日(1か月)関係予算議案を3月定例市議会に提出→令和8年6月29日プロポーザル審査(応募5社)→7月上旬契約予定来年度中の本格導入市長会見・プロポーザル結果ページ
神戸市2025年3〜4月検討開始2025年8〜10月2026年2月公募型プロポーザル2026年4月1日契約(上限額12,760,000円・単年度)総務省ガイドブックp.101・市公募ページ
京都市2024年11月〜2025年3月(9回線)令和7年4月公募型プロポーザル(IVR利用・運用保守は令和10年3月まで)2025年度に全区役所・支所の代表電話へ拡大市プロポーザルページ・事業者発表
大阪府令和9年9月に試行1か月令和8年4〜5月企画提案公募→令和9年2〜9月準備(約8か月)令和9年10月本稼働・5年契約仕様書

Step1 取次ぎの現状を数値で測る

交換手の日次報告書や交換機の着信ログを使います。赤磐市の仕様書には「着信件数、応答件数等を記載した日時報告書」の記載があります。

測る指標は次のとおりです。1日および時間帯別の着信数、転送先の課別件数、担当課不明で一旦電話を切った件数、1件当たりの処理時間(大阪府は76秒)、閉庁時間の着信数。

全期間を調べる必要はありません。赤磐市は「特定の1週間において調査したものの件数」を仕様書の別紙としています。1週間のサンプル調査で足ります

ここを飛ばすと、あとで効果を説明できなくなります。三次市の報告書が「導入前の数値がないため削減率を算定できない」としているとおりです。

Step2 自動化する取次ぎの範囲とKPIを決める

3章の4類型を除いた定型用件から、件数の多い順に上位10〜20用件を選びます。

KPIは4つに絞り、それぞれ分子・分母・取得元まで決めておきます。

KPI分子÷分母取得元
① 人の手を離れた割合(自動応答で完結+自動転送)÷自動応答が受けた総数自動応答ログ
② 誤転送率転送先の課から再転送された件数÷自動転送件数転送先の課の記録
③ 不明枠に落ちた割合有人・不明メニューへ流れた件数÷総数自動応答ログ
④ 時間外受付件数閉庁時間の受付件数自動応答ログ

Step3 振り分けルールと部署情報を整備する

部署一覧、各課の直通番号、用件から担当課への対応表、季節性、不明枠、緊急の除外を用意します。詳細は7章で扱います。

最初から網羅する必要はありません。長野原町は約1,500件の候補から400ワードに絞り込み、桑名市はQ&Aを300件以上登録しています(いずれも事業者の事例記事)。

Step4 庁内合意と関係部署との協議

総務省ガイドブックの「1.3 関係者との事前協議」では、情報システム部署・個人情報保護条例の所管・契約所管・企画担当が挙げられています。取次ぎの場合は、これに加えて転送を受ける側の各課と電話交換業務の受託者が相手になります。

交換業務委託の契約更新時期に合わせて仕様を見直すのが現実的です。岡山市は3年契約、赤磐市は長期継続契約です。

同ガイドブックの「2.4 AI導入計画書の作成」に沿って費用対効果とスケジュールを書いておくと、議会や市民への説明材料になります。

Step5 実証で数値を取る

期間の実例は、高松市が1か月、神戸市が約3か月、京都市が約5か月です。三次市は市民向けの実証の前に庁内実証を置きました。守口市は覚書ベースで実証を開始しています(総務省ガイドブックp.76のスケジュール)。

同ガイドブック第2章「3 調達・事業者選定」では、実証のみとするか本格導入まで含めるかを調達範囲として明示し、実証で定性・定量の効果を比較できる記録を残すことが求められています。

実証中も「人につなぐ導線」は必ず用意してください

Step6 予算要求と調達(入札・プロポーザル・随意契約)

実証結果を受けて議会に予算議案を出し(高松市は3月定例市議会)、調達に進みます。

調達方式は総務省ガイドブックの4類型です。一般競争入札は価格競争で事業者を決める方式、総合評価方式は価格と技術提案を併せて評価する方式、指名競争入札は指名した事業者間で競争させる方式、随意契約は競争によらず特定の事業者と契約する方式です。随意契約には「調達時点で要件を満たす事業者が1社のみ」といった理由が要ります(同ガイドブック「3.1 調達の準備」のA市の記述)。

契約期間の型は3つあります。

  • 単年度——神戸市は上限額12,760,000円で2026年4月から2027年3月まで。
  • 長期継続契約——赤磐市は「地方自治法第234条の3に基づく長期継続契約」。
  • 複数年——大阪府は5年契約(契約上限1,357,658,000円。これは有人コールセンターを含む規模であり、取次ぎ自動化だけの金額ではありません)。

なお交付金については、活用できる場合があります。制度名や要件は年度によって変わるため、所管部署に確認してください。

Step7 設定・試行運用・住民周知

既存の代表番号を変えず、その前段に自動応答を置きます。赤磐市の外線転送、京都市の区役所代表電話への前置がこの形です。

試行期間は、赤磐市が「1週間以上の試行期間」、大阪府が「令和9年9月の1か月間」としています。

周知は、広報紙・ホームページ・窓口掲示で次の3点を分けて案内します。「代表電話が自動音声になること」「人につなぐ操作の方法」「自治体から自動音声で発信することはないこと」。詳細は7-5で扱います。

Step8 本稼働後の改善(月次のログ確認と組織改編時の更新)

総務省ガイドブックは、運用開始後の見直しを「年に1回〜数回程度」と示しています(第2章「5 運用」)。ただし取次ぎでは、月次で「不明枠に落ちた用件」「誤転送」「未登録の用件」を確認し、ルールを追加していくほうが精度が上がります。三次市の改善項目には、品目や地区名の辞書整備、職員へ転送する判断ルールが挙がっています。

もう1つ、年次作業として入れておきたいのが組織改編・人事異動への追随です。4月に転送先が変わるため、その前に対応表を更新します。桑名市は「公式サイトの情報を更新するだけで電話の転送先も自動で切り替われば」と今後の構想を語っています。

ここまでの8ステップを自団体だけで組み立てるのが難しい場合は、無料相談で一緒に整理することもできます。次章では、その土台となる振り分けルールの作り方を見ていきます。

7. 振り分けルールの作り方|用件→担当課の対応表と「不明枠」「緊急」「季節変動」「周知」の設計

振り分けルールと対応表の作り方

ここからは実務です。引き継ぎ情報の設計・時間外の受け皿・フォールバックの考え方は自治体のAI電話対応とは?の記事で扱っているため、本章は取次ぎの対応表に落とし込む部分に絞ります。

7-1. 用件→担当課 対応表の項目

次の8項目を列にした表を作ります。

用件(住民の言い方)言い換え・キーワード担当課・係転送先番号対応時間時間外の案内自動で回答してよいか備考
住民票の写しがほしい住民票/謄本/抄本/証明書市民課等(直通番号)平日8:30〜17:15受付時間を音声案内可(手数料・必要書類の案内)マイナンバーカードでのコンビニ交付の案内も検討
ごみの出し方を知りたいごみ/分別/収集日/粗大環境担当課等(直通番号)平日8:30〜17:15収集日をSMSで案内可(分別区分・収集日)品目名の辞書整備が要る
納税通知の内容を聞きたい納税/通知書/税額/口座振替税務課等(直通番号)平日8:30〜17:15受付時間を音声案内不可(個別の税額は有人)通知発送後は繁忙期(7-3参照)

※担当課名は一般的な名称です。実際の名称は自治体ごとに異なります。

最初は件数の多い用件から作ります。長野原町は1,500候補から400ワードへ、大阪府は「最低大・中・小項目にカテゴライズ」する仕様です。部署一覧・直通番号・振り分けルールを自治体側で用意する点は、事業者側のヒアリング項目とも一致します。

7-2. 不明枠と複数課用件の逃がし方

「0番」「999番」または「無操作で有人へ」を、最初の案内に必ず入れてください。羽村市は999番、京都市も「一定時間操作がなければ職員応対」としています。

複数課にまたがる用件は代表の課を決め、対応表の担当課の列に第2転送先を持たせます。

聞き取れなかった場合は、聞き直したうえで人につなぎます。何回まで聞き直すかは設計事項です。

7-3. 緊急電話・時間外・季節変動

緊急。最初の案内で110番・119番・虐待通報等の別番号を案内し、自動音声では受けない設計にします。

時間外。閉庁時の受け皿(宿日直・警備室・電子音声)を、対応表の「時間外の案内」の列に書きます。三鷹市は平日8:30〜17:00が電話交換台で、それ以外は警備室です(市FAQ)。入間市は令和7年4月1日から、閉庁日・平日夜間(17:30〜翌8:30)の応対を「職員又は警備委託業者」から「電子音声」へ変更しました。電子音声にする場合も、緊急連絡先の案内は残してください。高松市の実証では、開庁時間外の問合せが約15%ありました。

季節変動。ここは他ではあまり触れられませんが、取次ぎでは効きます。転入転出期(3〜4月)、税の納付書発送後、選挙、給付金の時期に電話が集中します。岡山市は市民税・県民税の納税通知後に「電話回線がパンクし」たと実証事業の公募ページに記しています。大阪府は「想定業務量の変動に伴う協議」を毎年12月に行う仕様です。

対策としては、繁忙期だけ振り分けメニューの先頭を差し替える運用が有効です。年度当初は転入転出、6月は税、選挙前は投票所の案内を先頭に置く、といった入れ替えです。

7-4. 通話録音・会話ログと個人情報

取次ぎのログには、氏名や連絡先が含まれます。個人情報保護条例と情報セキュリティポリシーに沿って、保存期間・委託先の管理・学習利用の有無を仕様で決めてください。

ここは事業者によって扱いが分かれます。神戸市は「入力情報は生成AIに学習されない仕様」として条例に基づく市長の指定を取得しています(総務省ガイドブックp.101)。一方、守口市は「音声はAIの学習データとしてベンダーのサーバーで管理」とされています(同p.76)。

通話データを学習に使うかどうかは、契約で明示してください。どちらが正しいという話ではなく、明示されていないことが問題になります。

7-5. 住民周知と段階適用

取次ぎ特有の論点が2つあります。

① 「自動音声=詐欺」との混同

相模原市をはじめ多くの自治体が「市役所から電話で個人情報を聞くことはありません」と注意喚起しています。住民がかける代表電話の自動音声(着信側)と、自治体からの自動音声発信(発信側)は別物です。この2つを分けて周知し、代表電話の自動音声では個人情報を聞かない設計にしてください。

② 元に戻せる段階適用

実証は代表電話本体ではなく、専用番号で始めます。高松市は市民課向けに別番号で実証し、深川市は代表電話とは別の専用番号で令和8年9月14日から本格導入しています(市公式)。京都市は9回線での実証から全区役所へ拡大しました。

あわせて、階層は浅くしてください(編集部の目安として3階層以内)。二度言わせない引き継ぎ設計については自治体の電話自動応答とは?自治体のAI電話対応とは?の各記事で扱っています。

8. 段階的に取次ぎを自動化したい自治体へ(株式会社アップデートサポートのAI×有人対応)

AIと有人を組み合わせた段階的な導入

ここまで見てきたとおり、取次ぎには人に残す部分が必ず残ります。その前提のうえで、当社のサービスの考え方をご紹介します。

当社はAI×有人対応という構成をとっています。「話すだけ」で適切な窓口へ振り分け・回答することをコンセプトとし、AIが一度で発話内容を判断できない場合は、聞き取れなかった旨をお伝えして再度ご用件を伺います。それでも判断が難しい場合は、当社コールセンターへ転送するか、あらかじめ設定しておいた総務課等の担当部署へ転送する運用です。

対応範囲外のご相談内容や専門用語は、事前に共有いただくことでシナリオと辞書に反映し、順次アップデートしていきます。地域ごとに用件の種類が大きく異なるため、この更新を続けられるかどうかが精度を左右します

項目内容
既存番号との関係既存の代表番号を活かし、電話転送設定によって導入する想定です
導入の流れヒアリング・お見積り→設定・試験運用→本稼働。概ね1か月以内の本稼働を想定しています
初期費用初期費用は12万円(税抜)程度がひとつの目安です。事前に設定するAI自動回答の項目数などにより変動するため、詳細はお打ち合わせのうえ算出いたします
オプション夜間休日対応・多言語対応などをご用意しています(内容により費用が異なります)
運用サポート月1回の定例会で実際の対応履歴をご報告し、改善点を検討します
解約条件解約をご希望の場合は、3か月前までにメールでご連絡いただく形を想定しています
個人情報の取り扱いプライバシーマークを取得しています(登録番号10825293)

導入前に自治体側でご用意いただくものは、部署一覧、各課の専用番号(ホットライン等)、よくある問い合わせ、そして「どの用件をどの部署へつなぐか」の振り分けルールです。7-1で作った対応表が、そのまま使えます。

9. 自治体の電話取次ぎに関するよくある質問

Q

Q1. 自治体の電話取次ぎを自動化すると、担当課が分からない電話はどうなりますか?

A

不明枠を用意して、人につなぎます。羽村市のように「999を押すか、そのままお待ちいただければ交換手につながる」という導線を、最初の案内に入れておくのが基本です。担当課が分からない電話は例外ではなく常態なので、この受け皿を先に決めてから自動化の範囲を決めてください。

Q

Q2. 代表電話の番号を変えずに取次ぎを自動化できますか?

A

できる場合があります。既存の代表番号の前段に自動応答を置き、転送設定でつなぐ形です。赤磐市は外線転送で市役所外へ受け、京都市は区役所代表電話に前置しています。ただし既存の交換機の種類や回線種別によって条件が変わるため、現在の構成を確認したうえでご相談ください。

Q

Q3. 電話交換業務を委託している自治体でも、取次ぎを自動化する意味はありますか?

A

あります。京都市は交換業務の委託と併用しながら、約7割が交換手を介さずに完結しています(市公式)。委託を続けたまま、前段で自動化する形です。進め方としては、委託契約の更新時期に合わせて仕様へ組み込むのが現実的です。

Q

Q4. 取次ぎの自動化には、どのくらいの期間がかかりますか?

A

実証が1〜5か月、実証から本格導入までが半年〜1年というのが公開事例の時間軸です(6章の表)。設定自体は1か月程度を想定するサービスもありますが、自治体では予算要求と調達の期間が別に必要になります。

Q

Q5. 高齢の住民から「機械で冷たい」と言われませんか?

A

人につなぐ導線を最初に案内しておくことが前提になります。そのうえで、住民側の受け止めについては限定的な結果しか公表されていません。高松市の実証アンケートは回答15件で、「回答内容は適切だった」が100%だった一方、対応速度については約27%が「やや不満」と答えています。件数が少ないため、自団体で実証して確かめるのが確実です。

10. まとめ:取次ぎは「振り分け」から自動化し、人に残す電話の受け皿を先に決める

本記事の要点は次の5つです。

  • 取次ぎは「振り分け」と「回答」に分かれる。効果を測るときは分けて数える。
  • 人に残すのは、担当課不明・緊急・高齢者等・苦情広聴の4類型。この受け皿を先に決める。
  • 方式はIVR・AI振り分け・クラウドPBX・有人委託の4つ。単独では完結せず、組み合わせて使う。
  • 進め方は8ステップ。現状測定を飛ばすと効果が説明できなくなる。
  • 振り分けルールは、用件から担当課への対応表に不明枠・緊急・季節変動・周知を足して作る。

まずは1週間の着信サンプル調査と、部署一覧の整理から始めてください。無料相談では、現状の取次ぎ方法と振り分けの考え方を整理するお手伝いをしています。

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参考情報

一次資料(自治体・省庁の公式資料)

二次資料(事業者の事例記事・取材記事)

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