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自治体のAI電話対応とは?仕組みと有人連携のポイントを解説
自治体のAI電話対応とは、住民からの電話にAIが一次対応し、よくある問い合わせにはその場で案内しながら、複雑な内容は職員やオペレーターに引き継ぐ仕組みです。
ここで押さえておきたいのは、AIだけですべての電話に対応する仕組みではない、という点です。実際の運用で問われるのは、AIと人の役割分担をどう設計するか。電話が混み合う時間帯の待ち時間を減らしたい。閉庁後でも最低限の案内は返せるようにしたい。その一方で、福祉や税のように個別判断が欠かせない用件は人がきちんと受ける。このバランスが、自治体のAI電話対応ではかなり重要です。
従来の電話対応では、つながるまで待つ、担当課にたどり着くまで何度か取り次がれる、閉庁後は翌日まで確認できない、といった場面が起こりがちでした。AI電話対応は、そうした入口の混雑をやわらげるための仕組みと捉えると、イメージしやすいのではないでしょうか。
なお、この領域には「ボイスボット」「AI IVR」「電話自動応答」など、少しずつ異なる呼び方があります。本記事では、住民向けの電話受付全体をわかりやすく説明するために「AI電話対応」という表現で統一します。ボイスボット寄りの整理を先に見たい方は、自治体向けボイスボットとは?導入メリットと失敗しない選び方を解説もあわせてご覧ください。
1. 自治体のAI電話対応とは?AIが一次対応し、必要に応じて人につなぐ仕組み
自治体のAI電話対応をひと言でまとめるなら、AIが電話の最初の受け手になり、内容に応じて案内するか、人につなぐかを振り分ける仕組みです。
住民が自治体に電話をかける場面を思い浮かべてみてください。知りたいのは、開庁時間だったり、必要書類だったり、ごみの分別方法だったりします。こうした定型的な問い合わせなら、AIがその場で答えられるケースは少なくありません。一方で、「この世帯状況なら減免対象になるのか」「この事情だとどの手続きが必要か」といった内容は、AIだけで完結させるより、人が受けたほうが確実です。
つまり、AI電話対応の本質は自動化そのものではなく、一次対応の整理にあります。AIが最初の受け皿になり、人が対応すべき電話をきちんと人へ渡す。そこまで含めて仕組みです。
ここを誤解してしまうと、「AIに任せると冷たいのでは」「複雑な相談に答えられないのでは」といった不安だけが先に立ちます。でも実際は、AIに向く問い合わせと、人が受けるべき問い合わせを分けて考えるほうが、ずっと現実的ですし、住民対応としても無理がありません。
2. 自治体で電話対応のAI化が注目される背景
自治体でAI電話対応が注目されている背景には、職員の電話負荷と、住民接点の見直しが同時に進んでいることがあります。
代表電話には、担当課がわからない問い合わせが集まりやすいものです。内容を聞いて、担当課を探して、取り次いで、必要なら折り返しにする。1件ごとの時間は短く見えても、午前中にそれが何本も重なると、窓口や事務の流れはかなり止まります。現場としては、じわじわ効いてくる負担ではないでしょうか。
もうひとつは、時間外や閉庁時の課題です。住民からすると、平日日中にしか電話できないとは限りません。仕事終わりに思い出して電話したら、すでに閉庁していた。こうしたすれ違いは、自治体の電話対応では珍しくありません。
総務省も、自治体におけるAI導入の進め方や留意点をまとめた「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」の公表を行っており、生成AIの利用方法、利活用事例、利用時の留意事項などを追加しています。国としても、自治体のAI活用を手探りのままにせず、導入手順やガイドライン整備まで含めて後押ししている流れが見て取れます。
あわせて総務省の自治体DXの推進のページでは、住民利便性の向上、行政事務の効率化、庁内業務の最適化、そして相談対応業務等でのAI活用の促進が示されています。電話対応の見直しも、こうしたフロントヤード改革の延長線上で捉えられます。
3. 自治体のAI電話対応の仕組み|受電から回答・引き継ぎまでの流れ
AI電話対応の仕組みは、見た目以上にやることがはっきりしています。1本の電話が、だいたい次のような流れで処理されます。
受電から対応までの基本フロー
-
1
受電
住民が代表電話や対象窓口の番号に電話をかけます。 -
2
AIによる音声認識
AIが住民の話した内容を聞き取り、テキストとして把握します。 -
3
意図の判別
「開庁時間を知りたい」「ごみの出し方を聞きたい」「担当課につないでほしい」といった用件を判別します。 -
4
回答または引き継ぎ
定型の問い合わせは、FAQや想定問答に沿ってその場で案内します。複雑な用件は、担当課・有人窓口へ転送するか、折り返し受付へ接続します。 -
5
記録・通知
通話内容を記録し、必要に応じてテキスト化したうえで担当者へ通知します。
この流れを見ると、AI電話対応は「電話に出る仕組み」というより、「電話の内容を整理して、次の対応につなぐ仕組み」と考えたほうが近いです。
プッシュボタン式IVRとの違い
従来のIVRでは、「1は住民票、2は税、3は国保…」と番号を選んでもらう方式が一般的でした。これはこれでわかりやすい反面、選択肢が多いと迷いやすく、途中で戻れず困ることもあります。
AI電話対応は、番号操作ではなく、住民が話し言葉で用件を伝えられる点が大きな違いです。
| 比較項目 | 従来のIVR | AI電話対応 |
|---|---|---|
| 住民の操作 | 電話機の番号を押す | 電話口で用件を話す |
| 向いている内容 | 単純な振り分け、営業時間案内 | 問い合わせの一次受付、定型案内、有人への橋渡し |
| 弱み | 選択肢が多いと迷いやすい | 聞き取りや意図判別に限界がある |
シナリオ型と生成AI型の違い
AI電話対応には、大きく分けると2つの考え方があります。
シナリオ型は、あらかじめ用意した想定問答や分岐に沿って応答するタイプです。安定しやすく、運用範囲も見えやすい。一方で、想定外の言い回しには弱い面があります。
生成AI型は、FAQや関連情報を参照しながら、より柔軟に回答を返すタイプです。言い回しの揺れに対応しやすい反面、誤りや解釈違いが入り込む可能性もあるので、人による確認や運用ルールが欠かせません。
総務省の自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)でも、音声認識は自治体におけるAI活用機能のひとつとして整理されており、導入は「事前検討」「計画立案」「調達・事業者選定」「AIの導入」「運用」の5段階で進める考え方が示されています。
ここで正直に書いておきたいのですが、AIの認識精度には限界があります。聞き取りづらい話し方、周囲の雑音、制度上あいまいな相談。判別できないケースは、どうしても出ます。だからこそ、次章で触れる「どこまでをAIが受けるか」と、その次の章で整理する「どう人につなぐか」が重要になるわけです。
4. AIで完結できる問い合わせ・人が対応すべき用件の仕分け
AI電話対応を入れるときに、いちばん先に考えたいのがこの仕分けです。どんな電話までAIが受け、どこから人につなぐのか。ここが曖昧だと、うまく回りません。
AIに向く問い合わせ
AIに向きやすいのは、定型的で、回答のぶれが少ない内容です。
- 開庁時間や受付時間の案内
- 窓口の場所や担当課の案内
- 手続きに必要な持ち物の案内
- ごみの分別や収集日などの定型的な問い合わせ
- 証明書取得の一般的な流れ
こうした問い合わせは、職員が毎日のように繰り返し受けていることが多いはずです。件数が多いぶん、AI一次対応の効果も出やすい領域です。
人が対応すべき用件
一方で、人が受けるべきなのは、個別事情や判断が必要な内容です。
- 福祉、税、生活困窮など個別事情の確認が必要な相談
- 苦情やクレーム対応
- 緊急性の高い連絡
- AIの案内では解決しなかった問い合わせ
- 制度の例外判断や裁量が伴う内容
たとえば「このケースで減免対象になりますか」「家族構成が変わった場合はどう扱われますか」といった相談は、単純なFAQで返すには無理があります。背景を聞かないといけませんし、場合によっては複数部署にまたがります。
線引きは自治体ごとに違う
ここで大切なのは、正解がひとつではないことです。どこまでをAIに任せるかは、自治体の規模、対象業務、庁内体制、住民層によって変わります。だから導入時には、いきなりシステムの話に入るより先に、問い合わせ業務を棚卸しする必要があります。
実際にやることは地味です。「どんな電話が多いのか」「職員がよく繰り返している案内は何か」「人が直接聞いたほうがよい内容は何か」を洗い出す。その積み上げです。
この仕分けを誤ると、住民から見ると「結局AIに回されただけ」「何も解決しないままたらい回しにされた」と感じやすくなります。AIを入れることそのものより、AIで受けた後の動きをどう作るか。ここが次の章のテーマです。
5. 失敗しない有人連携の設計ポイント
AI電話対応を入れても、有人連携の設計が弱いと、住民満足も職員負担も思ったほど改善しません。少し大げさに言えば、AIの良し悪し以上に、有人側の受け皿が成否を左右します。
ポイント① 有人への切り替え導線を最初から用意する
AIが判別できない場合、住民が「人と話したい」と希望した場合、どうやって次につなぐのか。この導線は最初から決めておく必要があります。
考え方としては、主に次のような方法があります。
- その場で担当窓口へ転送する
- 折り返し受付に切り替える
- コールバック予約を受け付ける
- 受付内容を残し、後で有人対応につなぐ
どれが良いかは、庁内体制や時間帯次第です。すぐ転送できる部署もあれば、いったん受け付けて後から折り返したほうが現実的な部署もあります。
ポイント② 引き継ぎ情報を設計する
住民対応で避けたいのは、同じ説明を二度させることです。
AIが受けた内容を、そのまま職員やオペレーターにテキストで共有できれば、「用件はごみの収集日確認」「住所は○○町」「AI案内では解決しなかった」といった情報を引き継ぐことができます。これだけでも、住民の負担感はかなり違います。
総務省の自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)でも、AI導入後は運用段階を含めて改善していく考え方が示されています。AIで受けた内容をどう記録し、どう使うかは、導入後の使い勝手に直結します。
ポイント③ 時間外の受け皿を決めておく
閉庁後にAIが電話を受けた場合、その情報を翌開庁日にどう扱うか。ここも意外と大事です。
- どの部署に通知するのか
- 翌朝どの順番で確認するのか
- 折り返しが必要な案件の基準は何か
- 緊急性の高い内容はどう扱うのか
このルールがないと、AIが受け付けただけで終わってしまいかねません。住民からすると「受付はされたはずなのに返事が来ない」となるので、むしろ印象を悪くしてしまいます。
ポイント④ 例外時のフォールバックを設計する
聞き取りエラーが続いたとき、案内を打ち切るのではなく、別の受け皿へ自然につなげることが必要です。
たとえば、一定回数うまく判別できなければ、有人窓口の案内を流す、折り返し受付へ切り替える、担当部署への直通案内を行う、といった逃がし方を用意しておく。こうしたフォールバックがあるだけで、機械的な印象はかなり和らぎます。
ポイント⑤ 高齢者等への配慮を残す
電話で話すこと自体は慣れていても、機械音声とのやり取りが負担になる方はいます。高齢者だけとは限りません。急いでいる方、不安が強い方、説明が長くなりそうな方。そういう場面では、「人と話す」選択肢が常に残っていることが大切です。
総務省の自治体フロントヤード改革ポータルでも、デジタルツールの導入を自己目的にせず、利用者の利便性向上と行政運営の効率化に立ち返ること、スモールスタートや段階的な拡大が有効であること、運用後の効果検証と改善が重要であることが示されています。また、窓口改革と一体的に電話対応の効率化等を進める視点も挙げられています。
結局のところ、AI電話対応の導入効果は、有人側の受け皿の設計次第です。この前提を外さないこと。ここがいちばん大切かもしれません。
6. 自治体がAI電話対応を導入する際の注意点
AI電話対応は便利ですが、導入すればそのまま円滑に運用できるものではありません。事前に確認しておきたい注意点があります。
まずはスモールスタートで始める
最初から全業務を一斉にAI化するのは、現実的とは言いにくいです。問い合わせの多い定型業務から始めて、運用しながら対象を広げるほうが進めやすいでしょう。
たとえば、ごみ案内、開庁時間、証明書の持ち物、担当課案内。こうした領域なら、FAQ整理もしやすく、効果も見えやすいです。
導入後の改善体制を前提にする
AI電話対応は、導入して終わりではありません。応答ログを見ながら、「この言い回しで聞かれることが多い」「ここで聞き返しが発生しやすい」といった傾向を確認し、シナリオやFAQを直していく必要があります。
ここがないと、最初に作った想定問答のままで止まり、現場の実感とずれていきます。
個人情報とセキュリティを確認する
通話録音データをどのように管理するのか、テキスト化された内容を誰が閲覧できるのか。庁内規程との整合は取れているか。こうした確認は後回しにできません。
総務省の自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)でも、AI導入にあたっては個人情報や機密情報の取り扱い、生成AIの誤情報・偏向情報のリスク、人が確認するルールづくりなどに留意が必要とされています。
費用対効果は「業務改善込み」で見る
費用を見るときは、システム料金だけでなく、取次ぎ削減、時間外受付、記録共有、職員負担の軽減まで含めて考える必要があります。細かな料金比較は別の記事で深掘りしたほうが整理しやすいですが、少なくとも「何本の電話をどう減らしたいのか」は先に決めておきたいところです。
国の資料もかなり参考になります。総務省のガイドブックやフロントヤード改革の資料は、庁内説明のたたき台としても使いやすいはずです。
7. AIと人の連携を重視した電話対応サービスをお探しの自治体様へ
アップデートサポートでは、AIだけで完結させる前提ではなく、AIと人の連携をどう作るかを重視した電話対応の設計を大切にしています。
当社は、電話応対の有人運用に向き合ってきた会社として、単にAIを置くだけではなく、その先で誰がどう受けるのか、どのタイミングで人につなぐのか、という運用面まで含めて考えます。ここは、AIそのものの機能訴求とは少し違う立ち位置かもしれません。
たとえば、定型的な問い合わせはAIが一次対応し、個別事情や緊急性の判断が必要な内容はオペレーターや職員側へ渡す。緊急度の見極めも、最終的には人が判断する前提で設計する。この考え方のほうが、自治体の電話対応には合いやすいと当社では考えています。
電話対応は、仕組みだけでは完結しません。案内の順番、引き継ぎ情報、折り返しルール、時間外の受け皿。こうした運用の細部まで整って、はじめて住民対応の品質が安定します。だからこそ、AIと人をきれいに分断するより、つながる前提で組み立てたほうが実務では扱いやすい。そう感じています。
「AIを入れるべきかどうか」ではなく、「どの業務ならAIを使いやすいか」「人が残る部分をどう設計するか」から相談したい自治体様には、相性のよい考え方ではないでしょうか。
8. 自治体のAI電話対応に関するよくある質問
AI電話対応はどんな問い合わせに向いていますか?
開庁時間、窓口案内、必要書類、ごみの分別や収集日など、定型的で回答が整理しやすい問い合わせに向いています。件数が多く、職員が繰り返し案内している内容ほど効果が出やすいです。
AIが答えられなかった場合、住民の電話はどうなりますか?
有人窓口への転送、折り返し受付、コールバック予約など、人につなぐ受け皿を用意するのが基本です。AIだけで完結させず、有人連携を前提にした設計が重要です。
高齢の住民でも問題なく使えますか?
電話で話すだけで利用できる点は、Webやアプリより入りやすい場合があります。一方で、機械音声での対話が難しい方もいるため、人と話せる選択肢を残しておくことが大切です。
閉庁時間や休日の電話にも対応できますか?
AIが24時間受付の窓口になることは可能です。ただし、個別対応や最終的な回答は翌開庁日になるケースもあるため、その扱いをあらかじめ決めておく必要があります。
導入までにどのような準備が必要ですか?
問い合わせ業務の棚卸し、FAQの整備、どこで人につなぐかの設計が基本になります。システム選定より先に、業務の仕分けをしておくと導入後のずれが少なくなります。
9. まとめ:自治体のAI電話対応は「AIと人の連携設計」が成否を分ける
最後に、要点を整理します。
- AI電話対応は、AIが一次対応し、必要に応じて人につなぐ仕組み
- 受電から回答、転送、記録共有までを一連で設計することが重要
- AIに向くのは定型問い合わせ、人が受けるべきなのは個別判断や緊急性のある用件
- 導入効果は、有人への切り替え導線、引き継ぎ情報、時間外対応、例外時のフォールバック設計で大きく変わる
- スモールスタートと、導入後の継続改善が欠かせない
AI電話対応は、職員を置き換えるための仕組みというより、職員が本来業務や個別対応に集中しやすくするための仕組みです。ここを外さずに設計できるかどうかで、住民にとっても、庁内にとっても、使える仕組みになるかが決まってきます。
アップデートサポートでは、AIによる一次対応と人による対応をどう組み合わせるか、自治体の電話対応設計に関するご相談を承っています。代表電話の運用をどう見直すか、AIと人の役割分担をどう考えるか。すぐに導入を決める前提ではなく、現状整理の相談先としてご活用ください。自庁の電話対応に当てはまるのか、どこから小さく始めるのがよいのか。整理の段階からでも問題ありません。



