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自治体DXの事例|電話対応のデジタル化から始める理由

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自治体DXの事例|電話対応のデジタル化から始める理由

「国が公式に載せている事例はどれか」「自分の自治体と規模が近い事例はあるか」「費用と導入期間はどのくらいか」。自治体DXの事例を探すとき、知りたいのは事例の名前よりも、比較や予算要求に使える数値と出典ではないでしょうか。

本記事では、総務省の「自治体DX推進参考事例集」第4.0版を中心に、国・自治体の一次資料で数値を確認できる事例だけを取り上げます。後半では、同版で新たに設けられた「電話DX」の区分と、電話対応が窓口改革と一体で検討すべき取組とされている理由を整理します。

目次

1. 結論:自治体DXの事例は総務省事例集の4分冊で整理でき、電話対応は「窓口改革と一体で、件数で効果を測りながら」始められる取組になった

総務省の「自治体DX推進参考事例集」第4.0版(2026年(令和8年)7月27日)は、事例を「体制整備」「人材確保・育成」「住民サービス」「内部事務等」の4分冊で整理しています。同版では住民サービス編に「電話DX」の区分が新たに設けられ、6自治体の事例が掲載されました。既存の番号のまま導入した例もあれば、専用ダイヤルを設けて始めた例もあります。AIや自動応答を使う5事例は、いずれも受電件数や対応時間などで効果を示しています。

数値を1つだけ挙げます。AI(生成AIを含まない)を導入済みの自治体は、都道府県の98%、指定都市の100%、指定都市を除く市区町村の62%です(総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」、令和7年10月31日現在)。

4分冊の中身と、効果の測り方を早見表にまとめます。

分冊代表的な取組効果の測り方
体制整備CDO補佐官の任命、DX推進員の募集計画策定数、研修修了者数
人材確保・育成DX推進リーダーの育成、外部人材の登用認定者数、研修受講率
住民サービス(うち電話DX=2026年7月新設の区分)オンライン申請、書かない窓口、電話の自動応答・振り分け手続時間、受電件数、職員の対応件数
内部事務等RPA・AI-OCR、生成AIの庁内利用削減時間、職員の利用率

※「電話DX」は住民サービス編の中の区分で、4つの分冊と同格ではありません。

本記事で取り上げる事例は、国・自治体の一次資料で数値を確認できるものに限ります。電話対応DXの仕組みや種類、費用、選び方は「自治体の電話対応DXとは?」で解説しています。

2. 自治体DXとは|推進計画第5.1版の重点取組と、事例集第4.0版の4分冊

自治体DXとは|推進計画と事例集の4分冊

自治体DXとは、自治体がデジタル技術やデータを活用し、住民の利便性向上と業務効率化を通じて行政サービスを高める取組です(総務省「自治体DX推進計画」第5.1版の趣旨を編集部で要約)。

推進計画は、自治体に求められることの1つとして、次のように書いています。

「デジタル技術や AI 等の活用により業務効率化を図り、職員の負担軽減とあわせて、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく」

DXの背景やメリットは多くの解説があるため、ここでは事例を読むために必要な枠組みだけを整理します。

2-1. 推進計画第5.1版(2026年1月30日)の重点取組8項目と「相談対応への人的資源のシフト」

総務省の「自治体DX推進計画」は、第5.0版(2025年12月17日)に続き、第5.1版が2026年1月30日に公表されています。第5.1版が掲げる重点取組事項は次の8項目です。

  • 自治体フロントヤード改革の推進
  • 地方公共団体情報システムの標準化
  • 「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づく共通化等の推進
  • 公金収納におけるeL-QRの活用
  • マイナンバーカードの取得支援・利用の推進
  • セキュリティ対策の徹底
  • 自治体のAIの利用推進
  • テレワークの推進

あわせて取り組む事項として、「デジタル実装の取組の推進・地域社会のデジタル化」「デジタルデバイド対策」「デジタル原則を踏まえた規制の点検・見直し」の3つが挙げられています。旧版の「6つの重点取組」のまま紹介している解説もあるため、引用するときは版と日付を確認してください。

重点取組8項目の見出しには、「電話」や「コールセンター」の語は入っていません。一方で、フロントヤード改革の説明では、窓口改革によって「企画立案や相談対応への人的資源のシフトを促し」とし、住民との接点の「多様化・充実化(オムニチャネル化)」を求めています。住民にとって、電話は相談の主要な入口の1つです。この位置づけは6章で改めて扱います。

2-2. 事例集第4.0版(2026年7月27日)の4分冊・計117事例と、事例を探すときの3つの軸

「自治体DX推進参考事例集」第4.0版は、次の4分冊で構成されています。各分冊の目次で数えると、掲載事例は計117事例です。

分冊掲載事例数(目次の番号で集計)
1. 体制整備15事例
2. 人材確保・育成24事例
3. 住民サービス(うち電話DX 6事例)28事例
4. 内部事務等50事例

各事例は共通の様式で載っています。「事業の概要」「事業効果」「コスト(イニシャル・ランニング、税抜)」「スケジュール(検討開始から導入までの期間)」「サービス提供事業者」「担当部署の連絡先」が並び、ページの右上に人口規模のラベル(1万人未満/1万人以上5万人未満/5万人以上10万人未満/10万人以上30万人未満/30万人以上・都道府県)が付きます。

つまり事例を探すときは、「分野」「人口規模」「効果・費用・期間」の3つの軸で自分の自治体と照らし合わせることができます。

総務省の「地域DXポータルサイト」の事例検索でも、キーワード分野(22項目)・都道府県・人口規模で絞り込めます。ただし、キーワード分野に「電話」「コールセンター」はありません(2026年9月30日時点)。電話の事例を探すときは、事例集の住民サービス編にある「電話DX」の区分から探すのが確実です。

2-3. 導入は進んでいるが、課題の上位は「人材」「予算」「効果が不明」

総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」(令和8年4月24日版)は、令和7年10月31日時点の状況を1,788の都道府県・市区町村に調査したもので、全団体が回答しています。AI導入に向けた課題(複数回答)は、次の順でした。

  • 「取り組むための人材がいない又は不足している」826件
  • 「取り組むためのコストが高額であり予算を獲得するのが難しい」642件
  • 「導入効果が不明」571件

人材・予算・効果の3つは、事例を読むときにも確かめたい点です。事例集の各事例は「効果・費用・期間」を同じ様式で示しているため、予算要求や庁内説明の比較材料として使えます。

3. 【4分冊別】自治体DXの事例|国・自治体の一次資料で数値を確認できる取組

4分冊別の自治体DXの事例

事例集の4分冊すべてから事例を選び、「効果・費用・期間・人口」を同じ表にそろえました。効果は原文の表現のまま載せ、出典と時点を併記しています。人口は、事例集の【参考情報】欄の値(令和7年1月1日現在)です。

自治体(人口)分冊・区分取組公表されている効果(原文)費用(税抜)検討開始から導入までの期間出典
岐阜県下呂市(2.9万人)体制整備職員をCDO補佐官に任命し、内部の事情を踏まえてDXを推進「生成AI活用ワーキングの取組により、資料作成や発言録の整理に要していた総業務時間を最大90%削減」初期0円/年0円(内部職員を任命)6か月事例集第4.0版
栃木県真岡市(7.8万人)人材確保・育成実践的な課題解決を通したDX推進リーダーの育成「研修を修了した59名の職員を、DXアドバイザーとして認定」初期3,157千円1年事例集第4.0版
北海道北見市(11.2万人)住民サービス・窓口改革「書かないワンストップ窓口」住民異動や戸籍届に付随する手続き(約15,000件/年)を1か所で受付。「1年間あたり約1,000時間の業務時間が削減されたと推計」初期74,000千円/年4,400千円5年4か月事例集第4.0版
岡山県鏡野町(1.2万人)住民サービス・オンライン申請マイナンバーカードを利用した電子申請・届出システム「1年間あたり500時間の業務時間を削減」初期26,700千円/年875千円1年1か月事例集第4.0版
宮崎県串間市(1.6万人)住民サービス・オンライン申請施設(キャンプ場等)の予約をLINEで完結「1件あたり最大10分程度かかる電話での予約対応や受付調整に係る事務処理の件数が、1割程度にまで削減」非公表(既存の仕組みを応用し、初期設定費用はかかっていない)6か月事例集第4.0版
大阪府豊中市(39.8万人※)内部事務等・RPARPA・AI-OCRの活用「令和7年3月末時点で97業務にRPA・AI-OCRを活用し、年間約11,459時間の削減効果」初期約13,400千円/年約19,000千円1年5か月事例集第4.0版
兵庫県神戸市(指定都市)内部事務等・生成AIChatGPTの試行利用(2023年6月23日〜9月22日・職員133名)「仕事効率が向上すると思うか」に、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」が合計96%(最終アンケート・GPT-4・n=59)―約3か月(試行)神戸市 検証報告書(令和5年12月)
宮城県大崎市(12.2万人)住民サービス・電話DX固定電話を廃止し、クラウドPBXとスマートフォンへ移行「オンプレPBXを利用した場合と比較して、年間10,000千円の経費削減」。年度替わりの電話番号の変更作業が数日から1日に初期0円/年30,318千円2年事例集第4.0版

※豊中市の人口は、事例集の同事例の【参考情報】欄の値(令和7年12月1日現在)です。

表を読むときの注意点が2つあります。

  • 削減時間・削減率は、自治体ごとに算出方法が異なります(北見市は「推計」、串間市は「件数が1割程度に」など)。横に並べて優劣を比べる使い方はしないでください。
  • 豊中市の事例は、総務省の地域DXポータルサイトにも掲載されていますが、ポータルの値(令和6年3月時点)と事例集第4.0版の値(令和7年3月時点)は異なります。本記事では新しい事例集第4.0版の値を採っています(5章で詳しく扱います)。

住民サービス編は、オンライン申請や窓口改革など住民との接点の事例が中心です。その中に、2026年7月の第4.0版から「電話DX」の区分が加わりました。表の最後の大崎市は、その電話DXの1事例です。AIではなく電話設備そのものの更新で、電話DXは設備の見直しまで含む広い区分であることが分かります。次章では、この区分の6事例を一覧にします。

4. 【電話DX】総務省事例集第4.0版に新設された「電話DX」の6事例と、2026年の代表電話AIの動き

電話DXの6事例と代表電話AIの動き

電話DXの6事例は、代表電話の振り分け、特定の課の定型の問い合わせ、季節業務、予約受付、電話設備の更新と、対象が分かれています。AIや自動応答を使う5事例に共通しているのは、「人につなぐ導線を残している」という点です。既存の番号のまま導入した例(前橋市・北九州市)と、専用ダイヤルを設けた例(戸田市・一宮市)の両方があります。

4-1. 総務省事例集第4.0版「電話DX」6事例の一覧

自治体(人口)対象事業効果(原文)費用(税抜)検討開始から導入までの期間課題・工夫(原文の要旨)
三重県桑名市(13.8万人)代表電話の各課への転送「導入前は1日あたり20件程度、他組織への転送作業を行っていたが、導入後は1日あたり5件程度まで減少」初期224千円/年479千円10か月(試験導入3か月を含む)事前にキーワードと転送先を課内で集計してQ&Aリストを作成。自動生成分と合わせて300件以上。組織改革時などは調整が必要
埼玉県戸田市(14.2万人)花火大会前に集中する問い合わせ「約72時間の電話対応が必要であったが、サービス導入により約40時間の対応で済んだため、約32時間の電話対応業務時間が削減」初期―/年40千円(準備期間から当日までのみ契約)1年(初年度は大会当日のみ利用し、翌年度から準備期間も含めて導入)自動応答の文言が分かりづらいと、かえって職員対応やクレームが増えかねないため、「問合せ件数が多い」「口頭で説明するよりも分かりやすい」内容に絞った
群馬県前橋市(32.9万人)国民健康保険課への問い合わせ「問合せへの回答全体のうち、約1.5割が、自動応答システムによる対応で完結」。導入前年と比べ、同課への電話のうち職員が対応する件数が約3割減少非公表1年6か月(試験導入10か月を含む)庁内の受電数を調査し、受電数が多く簡易な問い合わせが多い課で試験導入。月次で性能を検証し、コールフローとホームページの案内を改善
愛知県一宮市(37.7万人)市民税・県民税の申告の来庁予約「1,724件の予約をAIのみで受付けることができ、約140時間の業務時間削減に繋がった。(1件あたりの応対時間を5分間として試算)」非公表1年6か月無形サービスのため費用が高いのか低いのか分かりづらく、庁内での予算編成に苦労。本番前のテストで、あえて言い間違いをして誤作動がないか確認
福岡県北九州市(91.4万人)市民課への問い合わせの一次対応「従来職員が対応していた電話のうち、約4割は生成AIで対応が完了」。時間外・閉庁日にも1日3件程度の利用。音声アンケートで約8割の利用者が肯定的な意見初期450千円(実証実験のためランニングコストの負担なし)5か月マイナンバーカードの問い合わせのみから始め、市民課業務全般に拡大。地名はローマ字で指定。回答内容を市民課とDX・AI戦略室が事後に点検
宮城県大崎市(12.2万人)電話設備の更新3章の表を参照初期0円/年30,318千円2年サービスをできる限り1社で提供できる事業者に委託し、責任分界点を少なくした

出典:総務省「自治体DX推進参考事例集【第4.0版】3.住民サービス」(令和8年7月27日)。人口は同事例集の【参考情報】欄の値(令和7年1月1日現在)。各事例のサービス提供事業者名とサービス名は、事例集に記載されています。

大崎市以外の5事例の仕組みと、電話番号の扱いは次のとおりです。

  • 桑名市:音声認識AIが用件を聞き取り、Q&Aリストに基づいて担当課へ自動で転送します。番号の扱いについての記載はありません。
  • 戸田市:専用ダイヤルに電話すると自動音声が流れ、番号を選んでいく方式です。資料で伝えたほうが分かりやすい内容はSMSで送り、一致するQ&Aがない場合は担当者に転送します。
  • 前橋市:番号を選ぶと、あらかじめ用意した自動音声が流れる方式です。用意のない質問や個人に紐づく質問は職員へ転送します。「既存の電話番号を変更することなく導入できるサービスを選定」したと記しています。
  • 一宮市:申告予約の専用ダイヤルで、AIが受電・日程調整・予約登録を行います。AIがうまく認識できなかったときのために、人が応対する電話窓口を残しています。
  • 北九州市:生成AIが用件を聞き出し、登録したナレッジをもとに回答します。回答できない場合は、用件を音声で職員に引き継いで転送します。「新しい番号に変更せずに、既存の番号への電話を生成AIに自動転送するように設定」したと記しています。

数値を読むときの注意点は4つです。

  • 各数値は、事例集に掲載された自治体の申告値です。母数や期間の記載がないものは原文のまま載せ、推測で補っていません(桑名市・前橋市の年間受電件数は公表されていません)。
  • 一宮市の約140時間は「1件5分」とした試算値です。前橋市の「約3割減少」は導入前年との比較で、ホームページの案内の改善など、ほかの要因も含まれている可能性があります。
  • 北九州市の費用は、実証実験のときの値です。
  • 事例集の費用は「主にシステム導入等に係るコスト」で、Q&Aリストやナレッジの整備に職員がかけた作業時間は含まれていません。

AIまたは自動応答を使う5事例のすべてに、「職員へ転送する」「人が応対する窓口を残す」という記述があります。

4-2. 2026年に本格導入・実証が相次ぐ代表電話のAI応答(事例集の外)

事例集は令和8年7月時点の掲載です。その後も、代表電話やコールセンターにAIを入れる自治体が続いています。効果の数値は、公表されているものだけを載せます。

  • 香川県高松市(市民課):令和8年2月2日〜3月1日にAIオペレーターの実証を行いました。市長定例記者会見(令和8年3月3日)では、「期間中595件の御利用」があり、職員へ転送された割合は「全体の約35%」、「残りの65%は、職員に転送されずに回答ができた」、「開庁時間外に問合せがあった割合は約15%」と説明しています。その後、本格導入に向けたプロポーザルで受託候補者を選定しました(令和8年7月1日公表)。
  • 宮城県岩沼市(42,494人・令和8年8月31日現在):令和7年2月に従来の代表番号を廃止してナビダイヤルに切り替えましたが、「従来の代表番号の方が番号を覚えやすい、番号選択の入力が難しい、などの市民の声」を受け、AIが応答する形で代表番号を復活させると発表しました(市プレスリリース、令和8年7月21日)。効果の数値は公表されていません。電話をやめるのではなく、電話の受け方を変える方向の例です。
  • 北海道深川市(17,502人・令和8年8月末現在):令和8年9月14日から、AIオペレーターによる電話対応を始めました。AIが用件を聞き取って回答し、職員の対応が必要な場合は担当課へ転送します(転送は開庁時間内のみ)。市の公式サイトでは、AIオペレーターの番号が代表番号として案内されています。効果の数値は公表されていません。
  • 奈良県奈良市:令和8年3月16日から本庁舎内とコールセンターの電話をクラウドPBXに全面移行し、令和8年秋以降にコールセンターでAIによる問い合わせの自動応答を始める予定です(市プレスリリース、令和8年2月10日)。稼働前のため、効果の数値はまだありません。

京都市(区役所・支所の代表電話の自動音声案内)と神戸市(税のボイスボット)は、「自治体の電話自動応答とは?」で紹介しているため、ここでは再掲しません。神戸市の数値は、次章で「出典によって数値が違う例」として取り上げます。

5. 事例を自分の自治体に当てはめる前に確認する5つのこと

事例を当てはめる前に確認する5つのこと

事例の数値は、そのまま自分の自治体に当てはめられるとは限りません。同じ自治体の同じ取組でも、出典によって数値が違うことがあります。確認したい5つの点を、実例とあわせて整理します。

確認すること実例
1. 母数と条件神戸市の税のボイスボットについて、総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」(令和7年12月・第4版)は、定型的な問い合わせの「50%以上(電話途中で離脱したものは母数から除く)」に自動回答できていると記載しています。一方、事業者の発表では「65%以上」とされています。母数や時点が異なる可能性があるため、引用するときは出典を併記します。
2. 何の数値か長野県中川村の「受電率50%から97%」は、通信事業者の導入事例ページの原文では、デマンド型タクシーの乗車予約の受付(外部委託から、フリーダイヤル2回線・地元スタッフ2名の内製に切り替え)の数値です。役場の代表電話の応答率ではありません。見出しの数値だけを転記しないようにします。
3. 併用効果か単独効果か大阪府守口市のごみ分別のAI電話について、総務省ガイドブック第4版は「AI電話相談とごみ分別ガイドのチャットボットを並行して稼働させたところ、電話相談の件数が約15%減少した」と記載しています。AI電話単独の効果として紹介されることがありますが、原文はチャットボットとの併用の効果です。
4. 実証か本格か、実績か目標か北九州市の費用は実証実験のときの値です。高松市の65%は1か月の実証の値です。神戸市の生成AIボイスボットの調達仕様書では、回答率の目標を「導入開始月に50%、導入開始後2か月後の1か月に60%、最終月に70%以上」としており、これは実績ではなく目標値です。事例集の「スケジュールの内訳」を見れば、試験導入と本格稼働の期間を確認できます。
5. 時点と版豊中市のRPA事例は、総務省の地域DXポータルサイトではページタイトルが「77業務・約10,400時間」、本文が「83業務・約10,900時間(令和6年3月時点)」です。事例集第4.0版では「97業務・約11,459時間(令和7年3月時点)」に更新されています。推進計画・事例集・ガイドブックは版が更新されるため、引用するときは版と日付を書きます。

事例集の共通様式(効果・費用・期間・人口規模)に沿って、自分の自治体の数値を先に置いてみると、比べる前提がそろいます。電話対応であれば、起点になるのは「部署別の受電件数と対応時間」です。

6. なぜ電話対応のデジタル化が入口になるのか|窓口改革と一体で後回しにしない5つの理由

電話対応のデジタル化が入口になる理由

推進計画は、フロントヤード改革の目的に「相談対応への人的資源のシフト」を挙げています。これを実現するには、相談の主要な入口である電話の受け方を、窓口改革と同時に決めておく必要があります。その理由を5つに分けて整理します。

6-1. 窓口をデジタル化しても電話は残る|手順書は電話対応を「窓口の改革と一体的に検討すべき取組」に位置づけた

総務省「自治体フロントヤード改革推進手順書」第1.1版(令和8年5月29日)は、「窓口の改革と一体的に検討すべき取組」の1つとして「電話対応の効率化」を挙げ、「4.3.2 電話対応の効率化」で手順を示しています。冒頭には次のように書かれています。

「窓口の改革を進めるにつれて、オンラインでの申請、来庁予約及び自身に必要な手続の確認等を行う住民の増加が見込まれます。これに伴い、オンライン申請時の操作方法や必要書類に関する疑問等について、問い合わせが増加することが想定されます」

これは手順書の「想定」で、問い合わせが増えたという観測結果ではありません。ただ、窓口を変えれば電話の中身も変わる、という見通しが国の手順書に書かれている点は押さえておきたいところです。

手順書が挙げる手段は、「電話対応の外部委託、FAQ・応答マニュアルの整備及び自治体のWebサイトでのFAQの公開・チャットボットの実装等」です。手順書には「AI音声応答」や「ボイスボット」の語は出てきません。AIによる電話対応の一次資料は、総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」第4版の側にあります。

手順書が外部委託の仕様検討で挙げる観点は、AIによる応答を検討する場合にも使えます。

  • 利用する回線数・回線の振り分け方
  • 休日や夜間等、開庁時間外の対応要否・転送フローの整理
  • サービス品質に関する要件(例:3コール内で応答した割合)

6-2. 導入前の現状値を、手順書の手順で自前に測れる

手順書は、現状分析として「部署別に内線・外線の受電件数や対応に要した時間等を調査することで、電話対応によって負荷がかかっている部署を特定」するよう示しています。

前橋市も、この順番で進めています。事例集には「庁内の受電数を調査したところ、当課に加え、社会福祉課と介護保険課が特に多く」、そのうえで「受電数が多く、なおかつ簡易な問合せが多い当課で試験導入することになりました」とあります。

導入前に件数と対応時間を測っておけば、導入後も同じ単位で前後を比べられます。桑名市の「1日あたり20件程度から5件程度へ」、戸田市の「約72時間から約40時間へ」は、その形で効果を示した例です。ただし、桑名市・前橋市の年間受電件数(母数)は公表されていません。

6-3. 一部の課・一部の期間から始めた例が多い(ただしQ&A整備は職員の作業として残る)

AIまたは自動応答を使う電話DXの5事例は、いずれも特定の課・業務・期間から始めています。戸田市は花火大会の準備期間から当日までだけ契約し、ランニングコストは年40千円でした。桑名市は初期224千円・年479千円です。北九州市は次のように記しています。

「導入当初は、マイナンバーカードに関する問合せのみ対応することとし、後に市民課業務全般に拡大しました。スモールスタートにより、システムの運用についての知見を溜める狙いがありました」

検討開始から導入までの期間は、5か月(北九州市)から1年6か月(前橋市・一宮市)です。

一方で、小さく始めても準備の手間はかかります。桑名市はQ&Aリストが300件以上、北九州市はナレッジの整備が必要で、事例集の費用にはこうした職員の作業時間は含まれていません。一宮市は「無形サービスであるため、費用が高いのか低いのかわかりづらい面があり、庁内での予算編成に苦労しています」と記しています。効果の数値と費用の内訳を、始めた時点から記録しておく理由がここにあります。

電話DXの6事例はいずれも人口12万人以上の市ですが、効果の数値は未公表ながら、人口5万人未満の岩沼市・深川市も代表電話へのAI導入を公表しています(4-2)。

6-4. 既存の番号を変えずに始める選択肢がある(前橋市・北九州市)

前橋市は「既存の電話番号を変更することなく導入できるサービスを選定」し、北九州市は「新しい番号に変更せずに、既存の番号への電話を生成AIに自動転送するように設定」しました。

一方、戸田市と一宮市は専用ダイヤルを設けています。どちらが正しいということではなく、花火大会や申告予約のように対象がはっきりした業務なら専用ダイヤル、代表電話や課の番号にかかってくる問い合わせなら既存番号のまま、というように対象業務で選びます。

岩沼市は、代表番号を変えた結果、市民の声を受けて代表番号を戻しました(4-2)。番号の変更は、住民の側の負担になりえます。

なお、転送の方式によっては通話料金の負担が変わります。手順書も「転送方式を検討する際には、住民・自治体ともに過大な通話料金が発生しないよう慎重な検討が求められます」としています。

6-5. 「人につなぐ」設計が前提で、デジタルに不慣れな住民を取り残しにくい

AIまたは自動応答を使う5事例のすべてに、職員への転送、または人が応対する窓口の記述があります。北九州市は、「複雑な問合せや、『マイナンバーカードの特急発行』等、個別の事情の精査が必要な問合せについては必ず職員が対応することとし、誤った情報を回答するリスクを最小化している」と記しています。

推進計画第5.1版も、デジタルデバイド対策の中で「アナログとデジタルのメリットを組み合わせ、利用者にとって最も利便性が高く、体験が良くなる手段を選択できることが望ましい」としています。電話は残す前提で、受け方を変える。電話対応のデジタル化は、この考え方に沿った取組です。

AIと人の連携の設計については、「自治体のAI電話対応とは?」でも詳しく解説しています。

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7. 自治体DXの財源|交付金・特別交付税・事業債の注意点

自治体DXの財源

DXの予算要求では、財源の整理も欠かせません。自治体DX全般で使われる主な制度を、所管の資料の原文にそって整理します。

制度所管対象率・上限など根拠資料
地域未来交付金(デジタル実装型 TYPE A)内閣官房・内閣府地域住民等がデジタルサービスを利用することで、デジタルサービスの効果をより実感できる取組(交付対象事業費が100万円を上回る事業)補助率1/2。交付上限は1事業あたり国費1億円(交付対象事業費ベース2億円)地域未来交付金 デジタル実装型TYPE A/V/S 制度概要(令和7年12月24日)
特別交付税(AI・RPA導入経費)総務省AI(生成AIを含む)・RPAの導入に関する経費(情報システムの標準化・共通化を行う20業務を除く)措置率0.3。措置期限は令和11年度まで自治体DX推進計画 第5.1版
デジタル活用推進事業債総務省デジタル活用推進計画に基づく事業。情報システムは「住民に対して提供するサービスに係る業務(内部管理に関するものを除く。)において当該住民の利便性の向上のために必要な情報システム」の導入・改修等。1件の事業費が100万円以上地方単独事業は充当率90%、元利償還金に対する交付税措置率50%。償還年限は原則5年以内。事業期間は令和11年度まで総務省 事務連絡「デジタル活用推進事業債等の取扱いについて」(令和8年4月1日)

電話対応のデジタル化を検討する場合に、特に注意したい点があります。

  • 地域未来交付金の制度概要には、「デジタル実装型においては、地方公共団体の業務効率化が主目的とみられる事業は対象外」とあります。さらに、「TYPEAにおけるサービス実装の効果として、行政事務の効率化等による所要時間の短縮や所要日数の削減は認められない」とされています。
  • そのため、職員の負担軽減だけを目的にした電話AIは、対象になりにくいと考えられます。検討するなら、時間外の対応や待ち時間の短縮など、住民の利便性向上を主な目的に据える必要があります。
  • デジタル活用推進事業債も、対象は住民向けサービスの情報システムで、内部管理に関するものは除かれます。1件100万円以上という要件もあるため、小規模なサービス利用は対象外になることがあります。

3章で取り上げた鏡野町の電子申請システムは、事例集の費用欄に「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による補助額:12,489千円」と記載されています。財源の記載がある事例は、予算要求の参考になります。

ただし、どの制度も「使える」「費用が賄える」と一概には言えません。要件や年度は変わるため、各制度の最新の資料を所管の府省で確認してください。

8. 一部の課・代表電話から段階的に始める選択肢(株式会社アップデートサポートのAI×有人対応)

一部の課から段階的に始める選択肢

本記事で取り上げた事例は、各自治体が総務省の事例集等に掲載した取組であり、当社の導入事例ではありません。

電話対応の見直しは、まず部署別の受電件数を調べ、件数の多い課の定型の問い合わせから始めるのが基本です。そのうえで、段階的に始める手段の1つとして、当社のサービスの考え方をご紹介します。当社は現在、自治体向けにこのサービスの提案を進めている段階で、以下は想定している運用です。

当社はAI×有人対応という構成をとっています。「話すだけ」で適切な窓口へ振り分け・回答することをコンセプトとし、AIが一度で発話内容を判断できない場合は、聞き取れなかった旨をお伝えして再度ご用件を伺います。それでも判断が難しい場合は、当社コールセンターへ転送するか、あらかじめ設定しておいた総務課等の担当部署へ転送する運用です。

対応範囲外のご相談内容や専門用語は、事前に共有いただくことでシナリオと辞書に反映し、順次アップデートしていきます。

本記事で整理した「一部の課から始め、人につなぐ導線を残す」という進め方に沿う選択肢の1つとして、ご検討いただけます。

項目内容
既存番号との関係既存の代表番号を活かし、電話転送設定によって導入する想定です
同時に受けられる通話AIが同時に受けられる通話は最大10本です。同時の受電が増えてきた場合は、上限の引き上げも可能です
混雑時の折り返し混雑時の折り返し(コールバック)は、現状は有人で対応しています
導入の流れヒアリング・お見積り→設定・試験運用→本稼働。概ね1か月以内の本稼働を想定しています
初期費用初期費用は12万円(税抜)程度がひとつの目安です。事前に設定するAI自動回答の項目数などにより変動するため、詳細はお打ち合わせのうえ算出いたします(事例集に掲載されている費用とは、対象の範囲が異なります)
オプション夜間休日対応・多言語対応などをご用意しています(内容により費用が異なります)
運用サポート月1回の定例会で実際の対応履歴をご報告し、改善点を検討します
ご利用期間ご利用は最低3か月からお願いしています(開始準備の期間を考慮しているため)
解約条件解約をご希望の場合は、3か月前までにメールでご連絡いただく形を想定しています
個人情報の取り扱いプライバシーマークを取得しています(登録番号10825293)

導入前に自治体側でご用意いただくものは、部署一覧、各課の専用番号(ホットライン等)、よくある問い合わせ、そして「どの用件をどの部署へつなぐか」の振り分けルールです。部署別の受電件数と対応時間を測っておくと、どの課・どの用件から始めるかを決める材料になります。

無料相談いつでもお受けしております

部署別の受電件数や、よく寄せられる問い合わせを伺い、AIで先に受けられる用件と人が受ける範囲を一緒に整理します。AIと有人対応を組み合わせ、一部の課から段階的に無理なく始められる形をご提案します。

無料相談はオンライン30分から受け付けています →

9. 自治体DXの事例に関するよくある質問(FAQ)

Q

Q1. 自治体DXの事例集は総務省のどこで見られますか?

A

「自治体DX推進参考事例集」第4.0版は、総務省の「自治体DXの推進」のページで、全体版と4分冊のPDFが公開されています。全体版は約32MBと容量が大きいため、必要な分冊を開くほうが読みやすいでしょう。総務省の「地域DXポータルサイト」の事例検索では、キーワード分野・都道府県・人口規模で事例を絞り込めます。

Q

Q2. 自治体DXの事例で多い分野は何ですか?

A

事例集第4.0版は、体制整備(15事例)・人材確保・育成(24事例)・住民サービス(28事例)・内部事務等(50事例)の4分冊、計117事例です(各分冊の目次で集計)。ただし、同じ取組が複数の分野にまたがることもあり、「どの分野が最も多いか」は数え方によって変わります。

Q

Q3. 人口1万人未満の小さな自治体でも参考になる事例はありますか?

A

あります。事例集には人口規模のラベルが付いており、1万人未満の自治体の事例も掲載されています。電話DXの6事例は人口12万〜91万人の市ですが、効果の数値は未公表ながら、人口5万人未満の岩沼市・深川市も代表電話へのAI導入を公表しています。小規模な自治体では、「一部の課や期間に絞る」「既存の仕組みを応用する(串間市)」といった進め方が参考になります。

Q

Q4. 事例の自治体に、直接問い合わせや視察の相談をしてもよいですか?

A

事例集の各事例には、担当部署の電話番号とメールアドレスが掲載されています。串間市の事例には「他自治体の視察や照会があった時によく質問されること」という欄もあります。問い合わせる前に、事例集の記載を読み込んでおくとやり取りがスムーズです。

Q

Q5. 事例の効果の数値を、そのまま予算要求の根拠にしてもよいですか?

A

そのまま使う前に、母数と条件、何の数値か、実証か本格導入かを確認してください(5章)。そのうえで、自分の自治体の受電件数や対応時間を先に測り、同じ単位で比べられる形にしておくと、説明の説得力が増します。

Q

Q6. 事例集は毎年更新されますか?古い版の数値を使ってもよいですか?

A

事例集は、令和3年7月の「自治体DX推進手順書参考事例集」(第1.0版)に始まり、令和7年6月に第3.0版、令和8年7月27日に第4.0版へ改定されています。推進計画も改定が続いています。引用するときは版と日付を書き、旧版の数値が最新版で差し替わっていないか確認してください。

Q

Q7. 議会の一般質問で他自治体の事例の数値を使うとき、何を確認すればよいですか?

A

次の4点です。1つ目は実証か本格導入か、2つ目は母数と期間、3つ目は出典が自治体・国の資料か事業者の発表か、4つ目は版と時点です。同じ自治体の同じ取組でも、出典によって数値が違う例があります(5章)。

10. まとめ:事例は「効果・費用・期間・規模」で読み、電話対応は窓口改革と一体で、一部の課・人につなぐ設計で始める

本記事の要点は次の5つです。

  • 事例集第4.0版は4分冊・計117事例で、住民サービス編に「電話DX」の区分が新設された
  • 事例は一次資料の数値で、効果・費用・期間・人口をそろえて比べる(3章・4章の表)
  • 事例の数値は、母数・何の数値か・併用か単独か・実証か本格か・版と時点の5点を確認してから使う
  • 電話対応は窓口改革と一体で検討すべき取組とされ、受電件数で現状を測り、一部の課から、人につなぐ設計で始められる
  • 財源は制度ごとに要件が違い、業務効率化が主な目的の事業は交付金の対象外になる

まずは、部署別の受電件数と対応時間の整理から。無料相談で現在の電話の受け方を伺い、AIで先に受けられる用件と人が受ける範囲を一緒に整理します。

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