AI活用事例
社内の「同じ質問」にAIが24時間対応。ShipStation Globalのヘルプデスク事例に学ぶ

社内の「同じ質問」にAIが24時間対応。
ShipStation Globalのヘルプデスク事例に学ぶ

社内のIT問い合わせが増え続け、同じ質問への対応に追われていた米ShipStation Globalは、Slack上で動くAIエージェントを導入しました。2026年10月13日に公開された事例では、3か月で1,221件の会話のうち812件がチャット内で完結したと報告されています。社内問い合わせの負担をAIで減らしたい企業にとって、設計のヒントが詰まった内容です。

事例紹介:Slack上のAIヘルプデスク「Deckhand」

●課題:繰り返しの質問と、時間帯のずれ

同社の社内ヘルプデスクのSlackチャンネルには、12か月で1,500件超のスレッドが投稿され、件数は増加傾向でした。従業員は米国、英国、スペイン、ポーランド、オーストラリア、フィリピンに分散しており、質問の5分の1以上は米国の営業時間外に届いていました。回答の手がかりはConfluence、イントラネット、PDF、過去のSlackスレッドに散らばっていました。

●取り組み:AIエージェントがSlackで一次対応

そこで同社は、Slack上で動くAIエージェント「Deckhand」を構築しました。社内ナレッジを検索して回答し、画面のエラー画像を読み取り、必要なときはJiraチケットを作成します。過去に解決したSlackスレッドも整理してナレッジに加えました。AWSのAmazon Bedrock AgentCoreなどのマネージドサービス上で動かし、チケット作成は人の確認ボタンを必須にするなど、重要な操作はコードで制御しています。

●成果:3か月の実績

項目 内容
導入時期 2026年4月に本番稼働
初回3か月の実績 メッセージ1,935件/エージェント会話1,221件/Jiraチケット409件
返答率 メッセージの97.5%に返答
時間外の質問 約3分の1が時間外に届き、その94%に回答
満足度 ポジティブ評価が4月の82%から6月には96%に向上
チャット内で完結 1,221件の会話のうち812件(チケット化を回避)

この記事は、1件あたり約30分の対応と仮定し、チャット内で完結した分を3か月で約406時間、年間で約1,600時間の削減に相当すると試算しています。なお、97.5%は「解決」ではなく「返答」した割合です。

気づき・教訓:自社に活かす4つのヒント

この事例は、ヘルプデスクに限らず、社内向けAI活用の多くの場面に応用できます。

POINT

AIエージェント導入で押さえたい4つのポイント

技術の選定よりも先に、情報・ルール・改善サイクルの整備が成果を左右します。

  • 1 まず「答えのもと」を整える。FAQ、社内規程、過去のやり取りなど、回答の根拠になる情報を整理してからAIに任せる。
  • 2 「いつ黙るか」を設計する。人が対応済みのスレッドや、他の人宛ての投稿には返答しない。受け入れられるかは、精度だけでなく振る舞いで決まる。
  • 3 重要な操作はルールと仕組みで守る。チケット作成には人の確認ボタンを必須にするなど、プロンプトの指示だけに頼らない。
  • 4 フィードバックを改善の燃料にする。低評価の理由を集め、プロンプトと知識を直し続けた結果、満足度が82%から96%に上がった。

特に「いつ黙るか」を決めるという視点は見落とされがちです。共有の場で空気を読まずに返答するAIは、すぐに使われなくなります。また、ナレッジに誤った解決策が混ざると、AIは誤りも同じ自信で答えてしまうため、過去ログを取り込む際の検証も欠かせません。

まとめ

成果の土台は、高度なAIモデルよりも、整った知識、明確な振る舞いのルール、改善を続ける仕組みでした。まずは自社で「同じ質問が何度も届く窓口」はどこか、その答えがどこに散らばっているかを書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。

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