図面を「一本ずつ拾う」から「AIが数百本を1分で検出」へ
――耐火被覆工事の事例に学ぶ、業務自動化のヒント
建設業の耐火被覆工事で、AIが構造図面から梁・柱・スリーブを自動検出し、積算や現場の進捗管理を効率化する新システムが2026年9月25日に発表されました。人手に頼ってきた「図面から数値を拾い出す」業務をAIに任せることで、属人化や長時間労働の解消につながる可能性があります。紙の図面や帳票を目で確認しながら数える業務を抱える企業であれば、業種を問わずAI活用のヒントになる事例です。
事例紹介:「一本ずつ手で拾う」から「AIが一括検出」へ
株式会社AITechと伏見工業株式会社は、耐火被覆工事における積算・施工管理を効率化する「構造部材AI認識システム」を共同開発したと発表しました(2026年9月25日公表)。
耐火被覆工事とは、鉄骨造の建物で梁や柱を火災の熱から守るための工事です。これまでの積算業務では、担当者が構造図面を1本ずつ目で確認しながら梁・柱・スリーブの本数や寸法を拾い出す必要がありました。大規模な物件では図面1枚に数百本の梁が描かれていることも珍しくなく、拾い漏れや計算ミスのリスク、そして長時間労働が課題となっていました。現場の進捗管理も紙へのマーキングや口頭報告が中心で、業務が特定の担当者に集中する「属人化」も避けられない状況でした。
新システムでは、AIが図面のページごとに梁・柱・スリーブを一括で検出し、1ページあたり約1分で検出が完了します。検出した梁の断面寸法から、周長や被覆面積も自動で計算されるため、担当者は数値を一から拾い出す作業ではなく、AIが出した結果の最終確認に集中できるようになります。さらに現場では、施工が完了した部材を図面上で「塗る」だけで実績が自動集計される仕組みも導入されており、月末に紙の記録と図面を突き合わせる作業が不要になる見込みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 従来の課題 | 図面から梁・柱・スリーブを手作業で拾い出し。大規模物件では図面1枚に数百本規模、拾い漏れ・計算ミスのリスクあり |
| AI導入後の検出 | ページごとに梁・柱・スリーブを数百本規模で一括検出。1ページあたり約1分で完了 |
| 進捗管理 | 紙のマーキング・口頭報告 → 図面上で「塗る」だけで実績を自動集計。月末の突合作業が不要に |
気づき・教訓:自社のAI活用に活かす4つのポイント
「見て数える・拾う」業務を抱える企業への示唆
耐火被覆工事に限らず、紙の図面や帳票を人手で読み取り数値化する業務は業種を問わず存在します。今回の事例から読み取れる実践のポイントは次の4つです。
- 1 「見て数える・拾う」業務はAI画像認識の得意領域です。人が目視で数を数えたり寸法を測ったりする作業は、AIの物体検出技術と相性が良いため、自社のどの業務が「見て数える」作業かを洗い出すことが最初の一歩になります。
- 2 自動化は「下書き」から始めて信頼を積み重ねます。今回のシステムもAIの出力はあくまで下書きで、最終判断は人が行う設計です。いきなり全自動化を狙うのではなく、人のチェックを残した段階的な導入がリスクを抑えます。
- 3 現場の記録作業もセットで見直します。積算だけでなく、現場の進捗記録という「後工程」まで含めて自動化することで、月末の突合作業のような二次的な手間まで削減できます。
- 4 業界特化の課題にこそ、共同開発の余地があります。今回はAI技術を持つ企業と施工会社が組んで、現場の具体的な課題に即したシステムを作りました。汎用ツールでは解決しない業務は、外部のAI専門企業と連携して自社専用の仕組みを検討する価値があります。
まとめ:次の一歩
自社の業務の中にも、「図面」を「伝票」や「帳票」に置き換えれば当てはまる、人手で拾い出している作業があるのではないでしょうか。今回の事例は建設業という特定の業界の話ですが、ボトルネックの見つけ方や段階的な導入の進め方は業種を問わず参考になります。まずは自社の業務の中から「人が目で数えている」「手作業で転記している」作業を一つ洗い出し、AI活用の可能性を検討してみてはいかがでしょうか。
出典



