表示に15分待ちのダッシュボードを秒単位に。GoDaddyのAIエージェント活用に学ぶ、社内データ活用のヒント
「その数字、どの画面を見れば分かりますか」——社内にダッシュボードは山ほどあるのに、欲しい数字にたどり着けない。そんな覚えはないでしょうか。2026年8月26日、AWSの公式ブログで、世界最大級のドメイン登録事業者であるGoDaddyがAI搭載の分析基盤「Amazon Quick」を導入した事例が公開されました。5,000を超えて乱立していたダッシュボードを半分以下に整理し、年間15,000時間以上の業務時間を生み出したこの事例から、社内に眠るデータを「使える」状態にするヒントを読み解きます。
ダッシュボード5,000超、表示に15分。GoDaddyが直面した「データはあるのに使えない」状態
世界最大級のドメイン・ホスティング事業者であるGoDaddyでは、事業の拡大とともに社内のBIダッシュボードが増え続け、その数は5,000を超えるまでになっていました。しかしデータ量の増加によって、主要な財務系ダッシュボードの表示に15分以上かかることも珍しくなく、インフラやライセンスにかかる費用も膨らんでいたといいます。
加えて、分析業務が中央のBIチームに集中していたため、現場の担当者が自分で必要なデータをすぐに確認できる「本当の意味でのセルフサービス分析」が実現できていませんでした。ダッシュボードは増える一方なのに、誰もが欲しい数字にたどり着けない。多くの企業に心当たりのある状態だったといえます。
こうした課題に対し、同社はAI搭載の分析基盤「Amazon Quick」を導入し、業務ごとに役割の異なる7種類のAIエージェントを展開しました。たとえば「ダッシュボード支援エージェント」は、ユーザーの隣に専属のアナリストがいるような感覚で、データの読み解きをサポートします。さらに「Quick Flows」という自動化の仕組みを使い、これまで人手で行っていた週次のビジネスレビュー準備をAIが代行するようにしました。この自動化フローは2026年の年始から100回以上実行されているとのことです。
| 項目 | 導入前 → 導入後 |
|---|---|
| ダッシュボード数 | 5,000超 → 2,500未満(約50%削減) |
| 主要ダッシュボードの表示時間 | 15分以上 → 5秒未満 |
| 年間削減時間 | 15,000時間以上(うちレビュー自動化分で約1,900時間) |
結果として、社内でダッシュボードやAIエージェントを利用する人数は4,298名に達し、うち作成者は828名、閲覧のみの利用者は3,128名にのぼるといいます。単に「速くなった」だけでなく、データ活用が一部の専門部署から現場全体へと広がったことが、この事例の大きな成果だといえます。
気づき・教訓:「作って終わり」にしないためにできること
この事例は、特別なテクノロジー企業だけの話ではありません。多くの企業に共通する「データはあるのに、使いこなせていない」という悩みに応用できる示唆が詰まっています。
「作って終わり」にしないための4つの視点
AI導入の効果は、ツールの性能以上に「何を減らし、何を任せるか」の設計で決まります。
- 1 「資料やツールは作ること」がゴールになっていないかを点検する。使われていないダッシュボードや帳票の棚卸しと統廃合は、AI導入より先にできる改善であり、AI活用の効果も引き立てる
- 2 AIエージェントは「置き換え」ではなく「隣にいる担当者」として設計すると定着しやすい。既存の業務フローに自然に組み込むほど、現場での利用は広がる
- 3 週次報告や定例集計のような「毎回同じ手順を繰り返す定型業務」は、AI自動化との相性が良い候補。まずはこうした反復業務から着手すると成果が出やすい
- 4 成果を「時間」という共通の物差しで数値化しておくと、複数の施策の効果を積み上げて評価でき、次の投資判断や社内展開の説得材料になる
まとめ:まずは「使われていない資産」の棚卸しから
自社にも、作られたきりほとんど見られていない資料や、毎週同じ集計作業に追われている業務が眠っているかもしれません。GoDaddyのように大規模なAI基盤を一気に整える必要はなく、まずは身近な業務のなかから「時間がかかっている割に価値を生んでいない作業」を1つ洗い出してみることが出発点になります。
その作業をAIに任せられないかを検討することが、自社に合ったAI活用への確実な一歩となるはずです。
出典



